タンニンで鞣した革を手縫いで仕立てています。塗装で色を作らないので、はじめは白っぽく素気ない。使う手の脂と日の光で、少しずつ飴色に澄んできます。手入れといえるほどのことは、ほとんど要りません。
はじめの数か月
仕立てたばかりの革は明るい肌色で、張りがあります。持ち歩いているうちに、手の当たるところ——持ち手、角、蓋の縁——から先に色が入ります。
半年ほどで色の差がはっきりして、角が丸くなります。三年で全体が飴色になり、細かな傷が馴染んで艶が出ます。そこから先はゆっくりで、十年経つと濃い飴色のまま、ほとんど変わらなくなります。
油はやりすぎない
いちばん多いのが、油の入れすぎです。表面に膜を張っていないので革はよく吸いますが、入れすぎると繊維が詰まり、色が沈んだまま戻りません。
乾いて硬いと感じたときに、少量を布で薄く伸ばす程度で足ります。年に一度で十分です。使って手の脂が入っている革なら、それも要りません。
濡れたとき
膜がないので、水に濡れれば染みます。乾いた布で押さえて水気を取り、そのまま陰で乾かしてください。
火や暖房の風で急に乾かすと、縮んで硬くなります。輪染みが残ることもありますが、使ううちに周りの色が追いついて、境目が分からなくなります。
傷と手の跡
細かい傷は消えませんが、時間が経つと周りと馴染んで艶の一部になります。深い傷はそのまま残ります。
同じ型でも、持つ人によって濃くなる場所が違います。どこが先に色づいたかが、その一点の記録になります。
縁が立ってきたら
縁は磨いて水だけで締めています。使っているうちに毛羽が立ってきたら、店で磨き直します。糸のほつれも直せます。
菱目打ちで穴をあけ、蜜蝋を引いた麻糸で二本針の手縫いにしてあるので、一目が切れても縫い目全体はほどけません。気づいたところで持ってきてください。